師匠、僕は今、案外と幸せです/桐子
世界中で 苦しんでいる人のために
詩を書こう そうしよう
橙色のポケットに手を突っ込んで
またたく間に一連の詩を引きだす
こいつはいい詩だ、と師匠は言った
いやなんの、と僕は謙遜した
つまらないものですが 世界の人達の
お役にたてるなら それも幸せです
ではこの詩は、と師匠は言った
橙色をしているのだから
わしは緑色の詩を書こう
師匠はすらすらと詩を吟じた
では、2人で一緒にこの詩を持って
遠いところへ運んでゆこう
海を越えて山を越えて
橙と緑が人の心を潤すように
乾いた大地は生き返るように
海もますます豊かになるように
空気はいや増しに澄み渡るよう
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)