言射し/伊月りさ
迷路をつたう
右手を失って
西とも東ともつかない大地に叫んでいた
空(から)の籾殻のような稚拙を
拾いあげた掌がみえる
その指先は
十の母だ
やわらかいわたしをつついて
わたしは汚泥を吐き続けて
時に
トンネルの多い鉄道で
緑の匂いと 確実な卑小さを知り
周到に南下して
入り口を隠蔽した
いつでも
わたしたちは点滅していたというのに
濡れた砂浜に寝そべって
自分の鋳型をとる
何度も、何度も、
一年も、二年も、
そうしてできあがった
いくつもの水溜りの中に
放られるおひねりで
生活していたというのに
いま
両手が広がる
わたしの右肩は
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