砂丘の花/三条麗菜
むばかりで
滑り降りるなんてできない
しかたなく歩いて降りて
子供を追ってまた登り始めた
子供はもう砂の頂上にいる
ほら見て
私も頂上に着き
子供の指す方を見た
目の前に広がるのは
砂丘でできた巨大な花だった
花が咲いているよ
花なんかじゃない
あれは全部砂
命の無い世界なんだよ
違うんだな
知っているくせに
子供はそう言って笑った
確かに私は知っている
ジョージア・オキーフという画家が
描いた絵だ
キャンバス一面に一つの花
でもあれは本物の花を描いたもの
砂の世界ではない
何が本物かって
そんなことどうだっていいんだ
子供はそう言って
また斜面を楽しそうに滑り始めた
私は一人残された
砂の中にはキラキラ光る粒が
混ざっている
風も無いのにその光が
またたいていることに気づいた
ここは砂丘に見えるけれど
砂丘ではないということ
そしてここが
私の中の幻だとしたら
私にはまだ
残されたものがあるということだ
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