カタコト/たもつ
傍らに咲く向日葵の肩に
歯車、のようなものが落ちて
僕らは片言で話す
君はカタコトと音をたてて
一面の夜みたいに
目を閉じている
カタコト
カタコト
いつかそんな音がする列車に
二人で乗ったね
目は開けていたけれど
真っ暗な中を走る
たしか、最終列車だったね
そして思い出という言葉を
使えるほどの勇気も
僕らはまだ持ち合わせていないね
歯車のようなものが飛んでいく
あれは歯車ではなくて
羽のある何か小さな生き物
何も忘れることなく
何も奪うことなく
きれいに見えなくなる
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