バーカウンターのスツールに腰掛けて/……とある蛙
 
ネオン輝く夜の巷
路地裏の狭い石畳を入ると
淡いランプの明りに
浮かび上がるバーの扉



ここは[遠い昔のバー]で
スツールに腰掛け
おしぼりで手をふいて
まず一杯[今のリキュール]を
軽く飲み干していたつもりが
グラスに注がれた酒は
遠い昔に仕組まれたもの

「どおりで喉越しがすんなりし過ぎていて」

今を破壊する仕組みだったとは
今の今まで気づかなんだ

琥珀色の液体は強烈な酒精分を含んでいるが
そうとは気づかせない芳醇な香りと甘みと
そして蠱惑的な色合いを持つ
一口含むタイミングさえ失わなければ
一気に喉を滑り落ち胃の腑へ落下する液体
その後訪れる酔いと惑乱



心地よい酔いと惑乱の中
他愛のない話が次第に
BGMのように頭を巡る
そのまま帰るのには惜しくなり
後で思い出す訳も無く
寝穢(いぎたな)くスツールに胡座をかいて
昇天する
天井から伸びた
毛むくじゃらの腕に鷲掴みにされて
昇天する。
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