サヨリ美人/長押 新
 
気を醸し出す
その色気に騙されるがまま仕上げた仕掛けが
水面に投げられると
次々にキスの嵐が吹いて
竿がクイクイと引き寄せられる
海から上がったサヨリの受ける光は熱を持ち
細い線が血を涸らして空を走る
ぎゅっと掴むとぬるりと鱗が脱げる
私の手が鱗で光った
愛しているって呟いても良いけれど
バケツから飛び上がるサヨリを見て
おじさんがやってくる
私は糸を垂らし一人で鼻歌を歌っている


戻る   Point(3)