サヨリ美人/長押 新
 

熱の少ない太陽が顔を照らし
濃い色をした海が
波の音もせずにサヨリの群れを映す
バケツに汲んだ海に
人差指を入れて吸いあげて
塩の味を確かめるのが好きだった
いつもより濃い人差指が
これまた光った
赤い色をしたオキアミを籠に詰めながら
岸壁に足を投げ出してみる
すぐに背を引っ張られ
広げられた椅子に座りこむ
影が魚を脅かしてしまったから
オキアミを撒いて魚に謝る
安い竿と他県のナンバーの車を
釣り場のおじさんが笑う
それを無視して鼻歌を歌うと
おじさんは散って行って口紅の綺麗なサヨリが踊り始めた
下唇の突き出た不格好な顔が
透き通る身体と合わさり妙な色気を
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