願うひと/恋月 ぴの
 
ひとを愛せなくなったと
あなたは嘆き

はなから愛なんてなかったのにと
わたしは呟いた




大切なのは感動なのかな

与えて
与えられて

生まれたての感動はぷるんと目にも鮮やかなのに

目をあわそうとせず
小さな画面のなかに逃げ込んでしまう

ほんものってさ
まなざしのなかにあるのにね

それなのに嘆いてばかりで
吸い過ぎの灰皿はふたりの約束知らずと煙たいよ

やめたんじゃなかったの?

知らん顔で吸っている
親指と人差し指に挟んでいるもの

気晴らしにもならないのは判っているはずだから




ふれてみようよ
おたがいのこころに

こんなにもあったかだなんて
今更ながらに驚いてみたりしてさ

それが愛ってことなのかも知れないよ

見つめる瞳の輝きに気づいて
ふたり尊敬し合っていることに気づいて

つかの間だってかまいやしない

ふれあうことの優しさに
これが最後の最後だからと身を任す









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