うつろい/佐々木青
遠くにたなびく雲たちが
かすかに色づきはじめた
広くひらけた空
あんなに遠くにと思われた空は
見上げると
ふれられるほどに近かった
象の親子のかたちをした雲がやってくる
風にのって ゆっくりと
夕と夜とをひきつれて
そのあわいで水あびをする
公園の噴水は
そうした愛をことほいでいるのだ
均一にならぶ街灯たちは
人々のいとなみをまもる兵隊のように
りりしく灯をともした
――わたしはまた空を見上げる
横切る大きな鳥たちのむれ
そのさきには 細い月が浮かんでいる
今か今かと 出番を待ちながら
わたしの座るベンチの横を
のらりくらり とおりすぎていく黒猫
それは月の出番を告げる合図
おおきく ひとつ あくびをすれば
おくから這いだす 夜のとばり
風が
冷たくなる
日が
次の空をめざして
小さく
ウインクする
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