どうぞ、働いてください/番田 
 

この街に来てからというもの
僕は
何もすることがなかった
仕事がなかったから
人混みの中に紛れては
帰るべき場所を探して歩いていた気がする


遠い昔のことではない
不況は今もこの国に深く根を下ろし
人は行き場を無くしている
若者は働く場所をなくし
イギリスでは暴動が起きたという
日本では起きないが
若者は働く場所をどこにもなくした
働く価値のないところに
仕事などありはしないのだろう


そんな気がした 今日も
街の中を歩きながら 僕は
ぼんやりと ひとり
あるべき寝床を探して
行く場所もなく 吉野家から
角を伝って 流れていった



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