夜に離す/木立 悟
黒い森の自画像
照らせない色を重ね
声を描いた
ひとつ上から落ちる真昼に
金と緑の暗がり
雨のなか とりあう手
星のありか 点と点を
十四までつないで
石の天使 石の檻
雨は雨に遠去かり
誰もいない道を残す
ひかり ひかり あらわ
まばたきにまばたかれるまだらから
虚ろに至る途中の冬を
満たす糸に必然は無く
音だけの生きものは生まれくる
石を肉に戻す滴は
手のひらから手のひらへ伝い流れる
だがはじめから石であったものらを
肉にすることはできない
空に生えるけだもの
こぼれおち
水に生えるけだもの
うたい呼びあう
帰れないものらの名と色を
砂に洗われ
砂に立つかたち
粗い光の隙間から
光は空と水の際を見る
誰でもない手に
滴は爆ぜて
添う背を伝い 石を伝い
金は緑を描き
緑は金を秘す
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