坦懐/るるりら
 



ほいと 見知らぬ人から 
土のついた球根をもらった夜
その人の 笑顔が こだわりのなさが 
他人の私に わたされた 球根が
わたしの夜を あたためる

昼間と違い雨が降る秋の夜長は
すこしあたたかく こころが きもちより
さらに すこしのびて 球根に見惚れた

これをくれた お婆さんは
道で突然  わたしの服を褒め
おかえしにわたしは お婆さんのネックレスを褒め
そして ほいと 手渡されたのが 土のついた球根だった

明けた朝はしらじらと 霧の中
あの塊に 虚心坦懐となずけたら
内緒だけど わたしの こころは 貝の中の乙女

霧の中の
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