ユキの階段(1)/吉岡ペペロ
 
で見ていた

夢のなかでユキはじぶんの指さきの温度いがいすべてに違和感を感じながら数学のむつかしい定理を解き明かそうとしていた

応接室に漂う春の水っぽい空気に顔や鼻や首をひたしながら何故指さきだけ違和感を感じないのだろうと思った

ホアシトオルと抱き合ったときの熱と鳥肌と溶けそうな気持ちを思い出していた

姫山さん、今回だけやで、あんたの度胸に熱いもん感じたんやからな、

社長、ありがとうございます、絶対迷惑かけへんよう、かならず乗り越えます、

ユキはムカイヤマさんの目をしっかり見つめながらそう返事をした

そしてトオルの肩にしがみついたとき指さきだけが違う温度であったのを思い出してまた自然と笑みをこぼした





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