ユキの階段(1)/吉岡ペペロ
振り出した手形の期日をさきに延ばしてもらおうとアポもとらずにユキは仕入先の材料屋さんに朝駆けをした
その建物に入るとき一瞬ホアシトオルのことを思い浮かべてユキはクスッとほどけたような気持ちになった
なにかいいことがあるようなそんな気がした
カウンター越しに事務員に声をかけた
朝のざわついた感じに少し臆病になりそうなのを堪えて社長を呼んでもらった
内線をきった事務の女に付いて応接室に入るとユキは立っていようか座っていようか迷った
春はもうどこからかこの応接室にも忍びこんでいてユキが座るソファにもなんだか冬のものではない湿気が感じられた
社長のムカイヤマさんが
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