塔/深水遊脚
 
かで
それぞれが別々にぼんやりと存在していた

塔は送電線を繋ぐ
繋がるものには始まりと終わりがある
ひとつだけ送電線の終わりを偶然発見した
そのことで目に映る風景が変わった
塔が少しだけ主張するようになった

始まりと終わりを含めたすべてを知ることは
わりと簡単に出来そうだ
たいていのことは好奇心と根気と時間があれば
ちゃんと理解できるようになっている
でも今以上に塔に主張してもらっては困る気がする

始まりでも終わりでもない
どうやら私の住む場所ともあまり関係がなさそうだ
そのことでかえってちょうど良い距離を感じている
知りすぎれば醒めてしまう
踏み込みすぎれば壊れてしまう
ただそこに在って欲しい
今はそのように感じている
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