前奏曲/メチターチェリ
にしか通ったことのないぼくにとって、視界に映るその光景はいくらか背伸びをしているようにみえた
レンガ敷きの広場を歩きながら、閑散とした構内が普段どれだけの人で埋められるのか想像してみた
多くの人に相応して、この空間には大きな喧騒が渦巻いている
大学生としての自由を、皆それぞれに味わいながら
しかし、今この光景を目にしてしまった以上、ぼくは大学での日常をこなしていくうちも、ことあるごとにこの静寂を慮るだろう
高校三年の春、恋をしていた
満ち足りていたぼくにとって、大学に通うという実感はそのようにして訪れた
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