帰路/faik
酔った足元がふらついて
自分がまだ歩いていたことに気が付いた
鳴り響く音楽は平和と叫ぶ――
――遠くでサイレンが人を運ぶ
クラクションで威嚇するトラック――
――淡い絶望が張りついた
立ち上がりたくない
帰りたくない
だが血液は従順に脳を流れる
当たり前に生きているあたしを
偽善者と罵るこのニヒルも
生きている
もう生まれてしまっているんだ
あたしという脳の宇宙で
世界も それと同じやも知らぬ
アスファルトの他人面に 頬ずりして 冷たく
近くを歩く男が甘く
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)