帰路/faik
 
酔った足元がふらついて

自分がまだ歩いていたことに気が付いた


鳴り響く音楽は平和と叫ぶ――

――遠くでサイレンが人を運ぶ


クラクションで威嚇するトラック――

――淡い絶望が張りついた


立ち上がりたくない

帰りたくない

だが血液は従順に脳を流れる


当たり前に生きているあたしを

偽善者と罵るこのニヒルも

生きている

もう生まれてしまっているんだ

あたしという脳の宇宙で

世界も それと同じやも知らぬ


アスファルトの他人面に 頬ずりして 冷たく

近くを歩く男が甘く
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