彫刻家/葉leaf
 
る空間は死にます。そのとき私は、ボールが到達する空間からその血液を抜いて、ボールがもとあった空間へとその血液を移動させるのです。私の統御するこの血液の運動こそが、物質の運動に先立っていて、地球上の物質のあらゆる運動・変化を彫刻するのです。」
「なるほど、僕が日の光として生きた空間を透過するとき、常に僕を翻弄する流体があると思っていたら、それが空間の血液だったのですね。今日はお話できて楽しかったです。またお会いできるといいですね。」
「そうですね。」

僕は新しい理解の温流を浴びながら
理由のない義務感に駆られて
椅子から立ち上がった
老彫刻家は煙草の灰を灰皿に落とした
灰が熱を失っていく速度で
表情を無防備な状態に戻し
二度とこちらを見なかった
僕は家具が豊かに配置された部屋を出て
玄関のステップを降りた
頭上には日の光が降り注ぎ
足元には地球があった


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