桃色の鞄/草野春心
 


  鮮やかな桃の色をした
  あなたの大切な鞄が
  線路の上にある
  今は秋の朝
  未だ人のまばらな
  プラットホームから眺めるとそれは
  轢かれるのを待っているように見える
  ピアノの低い音が
  顔色を窺うように割って入る
  今は
  秋の朝
  金木犀の香りが
  あなたをやさしく虐殺してゆく朝




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