アイテム/ホロウ・シカエルボク
 
なる
周波数を合わせて
国境のないところを飛んでくる音楽を聴きたくなる
まだ
スナックの箱のように素っ気なかった
スピーカーとチューナーだけのラジオで




母親のいない部屋の
わずかなぬくもりだったあのラジオ




ジャングルの中で狙い撃ちをされた仲間たちのうちで
何人が死神の裾を掴んで行ったんだろう
あと数ミリタイミングが違えば
脳漿を魚のビタミンに変えたのは自分だった
規律や統率のなくなった夜の中で思うことは
何故生きたいのか何故死にたくないのかとただそれだけ
小銃を空に向ける
パイナップルみたいな腕時計が誰も知らない時間を指す
草原の彼方からは
仲間の死骸を喰らい尽くすようなおぞましい風が吹く
恋人のイヤリングと妹のハンカチが
僅かに自分を思い出すシステムだった




足音が聞こえる
そこには何人居るんだろう





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