アイテム/ホロウ・シカエルボク
 



くらい匂いのする国境のラインを
冷たい土を抱いたまま駆けぬける世代の
土くれに摩耗したブーツについた名前はプライド
硝煙たちが
演算されるコンピューター・システムみたいに次々と成仏した塹壕の名残で
上手くきけない口を閉じたまま撃鉄が弾き出す次の太陽を待ちわびた




虫たちは
オーケストラの肩慣らしのようにたいして気持ちのない音を響かせ
まるで運命の足音のように聞こえる
どうしても短くなる呼吸を必死で制御しながら
子供のころに廊下に落とした
ディストーション・ギターみたいな泣声のことを思い出す
そんな瞬間にはラジオが聴きたくなる
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