旅路のひと/恋月 ぴの
 
は鈍い光を放ちながらも夕闇と沈む




果たしてこの場所だったのだろうか

ここでは無かった気もするけど
いつかの日に訪れたはずの記憶を頼りに探し出す

わたしがわたしであった証

生きてきた痕跡

たとえ泥に塗れていたとしても
わたしがわたしであったとするなら、それを否定することは叶わずに

幸せとは時を刻んだ日々のひとつかみ
ほろ苦く噛み締める刹那にも訪れることを知る




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