旅路のひと/恋月 ぴの
 
旅ってなんだろう

帰るところあっての旅なんだろうけど

住んだこと無いはずなのに
慣れ親しんだ気がしてならない場所へと帰ってゆく

そんな旅路もあるような気がする




無人駅のホームでひとり

秋の日差しは山間を掠めるように影を伸ばし
手持ち無沙汰のベンチでアキアカネは羽を休める

手にはカバンひとつ

思い出とか詰まっていることもなくて
仮に誰かの詩集の一冊でも入っているのなら

言い訳のひとつでも語れるのかも知れないけど

次の列車はこの駅に止まるのかな

耳を澄ませば澄ますほどに辺りは静けさに支配され
駅のはずれで交差する鉄路は鈍
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