蘇生/草野春心
 


  十月の豊かな光が
  いつもの駅前
  喫煙所のボックス灰皿のあたりに
  私が待たせている
  ひとりの女の額のあたりに
  しっとりと落ち、
  浸食するように広がる
  意に介さず女は
  煙草を吸う
  桃色のラインが
  フィルターを彩っている
  タールたった一ミリの煙草を
  吸い込むたびに彼女の
  眉間にうっすらと皺が浮き



  私は
  彼女を抱きたいと思う
  美しい女だ
  けして痩せているわけではないが
  体の膨らみは男を誘うように結実し
  唇は淡く色づき
  薄茶色の髪の香り
  それは金木犀を凌いで芳
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