宿る/A道化
余りにもあどけなく捨てられた
紙屑 に
余りにもあどけなく捨てた
指 に
同じように宿るものを
冬と 呼ぼう
乾いたマンホールの薄い模様を通り過ぎたあと
歩道の段をのぼれず
微か 微か ふるえもがく紙屑
を嘗て捨てた 指
を嘗て取り落とした 手のひら
を嘗て振り払った 肘
微か 微か ふるえもがく
追いかけっこの痕跡に宿るものを
冬と 呼び
冬 と 呼び
私は あらゆる紙屑を 振り返る
それを振り返る私の眼に 気付かず
それは ぼんやり
遠い指へ 遠い指へ 遠い指へ
思いを馳せる
振り返っても 馳せても
振り返っても 馳せても
いつまでも ずっと
合わない眼球が ある
いたるところに
追いかけっこの痕跡が ある
いたるところに 同じように宿るものを
さあ
冬と 呼ぼう
2003.11.24.
戻る 編 削 Point(4)