自転車/さすらいのまーつん
 
車は嫌いだけど
走るのは好きだ
このひょろりとした二本の足で ぐずぐずと走るのが
周りの景色が 少しずつ風の中に溶けていく感覚
肺が 呻きながらも 喜ぶ
口を きっと結ぶ
僕には 目的地がない

自転車もいい
ペダルを踏む
進む どんどん進む
ゆっくりと 駆動していくリズム
そのうち 全身で掻き分けている風が
少しずつ 重くなってくる
重力の鎖が ピンと張ってくる

加速を何層にも重ね塗りすると 疾走という器(うつわ)ができる
それは火にかけた水が ある段階に達すると
ふいにぐらぐらとたぎる 湯に変わるのに似て
束縛からの 開放に似て
変化は 瞬く間に起きる
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