沈黙するお喋り/御笠川マコト
おや
朝の電車に 赤いランドセルふたり
姉妹かな,
ホームに残った母親に 手を振っている
柔らかな両手が動く
声にならない 唇の動きと一緒に
よどんだ空気を切りながら
僕には聞こえない「いってきます」
閉まるドアが
あちらとこちらに 温もりを分けた
あんたたちの
今日一日が 楽しけりゃいいと
ちょっと思うおじさんがいることに
気づくことなく
沈黙するお喋りが続いている
電車の振動に合わせるように
両手でよどんだ空気を
切りながら
沈黙するお喋りが続いている
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