うつろいだ夜に/ehanov
た。
(……足、くじいちゃったのよ
坂道で、……記憶がない、
ふらついたの……煽られて
……風だったような気もするし
……地面、硬かった、うん……
いま、いまは家……そろそろ、
楔がすこし、足りないみたいなんだけど
うん、明るくならないまま、終わるのかな ……)
電話を降ろした。月は照っている。発光して、煙草を飲んだ。紫煙はすぐに消えて、苦味は唾にして捨てた。唾は焦げていた。焦げた唾は、限りなくあった。その上を、無数の蛾が舞っていた。波のぶつかる音が、岩を砕くように響いた。蛾はそれぞれ、焦げた唾に落
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