復讐/オノ
 
が・・・
それを除いてはつとめて善くふるまい、そのために模範囚として
少しの刑期の短縮を勝ち取ったほどだった。
全ては復讐のために。
そして釈放の日・・・
たしか雪が降っていた。
看守がなにかありきたりなことを言って、それに一礼した男は
帽子を目深に被りなおして風の中を歩き始めた。
あの男の居場所は分かっている。
このような不穏な天候の休日、あの男のいる場所は・・・
男の中には確信めいた想定があった。
長年、行動を共にした間柄ならではの直感であった。
灰色の空の下、またそれを助長するように陰気な灰色の公園。
その池のほとりのベンチに、男は座っていた。
それから読んでいた新聞をバケツに捨て、またどこかへ
行こうと立ち上がった。
宿敵が自分に背を向けた瞬間、男は素早く、しかし音もなく
彼にすり寄った。
完璧な接近だった。ポケットのナイフ―知人に頼んで私物の中に紛れ込ませて
おいた―を背中に突き立てれば、男は幾多の想像の中でそうしたように、
苦しいうめき声をあげて地に伏しただろう。
ただ、男は間違えて宿敵を抱きしめてしまったのだった。
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