見つめるひと/恋月 ぴの
あきらめてみる
たとえばわたしでいることをあきらめてみる
すると亡くなった母のこととか
ひとりぼっちの寂しさとか
なんだかふぅっと身軽になれて
お線香のくゆりは相変わらず苦手だけど
摘んできた野菊を遺影に手向け
四十九日はもうすぐで
納骨の手はずとか整えないといけないのだけど
あいかわらずの不甲斐なさ
そろそろ一本立ちしないとね
なんて
いきがってはみたものの
足元を整えなおすことさえままならずに
※
あきらめてみる
たとえば慕い続けることをあきらめてみる
すると好きだったあの人のこととか
手首に残る自傷の
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