見つめるひと/恋月 ぴの
 
あきらめてみる

たとえばわたしでいることをあきらめてみる

すると亡くなった母のこととか
ひとりぼっちの寂しさとか

なんだかふぅっと身軽になれて

お線香のくゆりは相変わらず苦手だけど
摘んできた野菊を遺影に手向け

四十九日はもうすぐで

納骨の手はずとか整えないといけないのだけど
あいかわらずの不甲斐なさ

そろそろ一本立ちしないとね

なんて
いきがってはみたものの

足元を整えなおすことさえままならずに




あきらめてみる

たとえば慕い続けることをあきらめてみる

すると好きだったあの人のこととか
手首に残る自傷の
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