名前という制服/さすらいのまーつん
 

鳥は景色を愛でるためだけに 飛んでいるわけではない
楠が楓の木に向かって
「お前は何故そんな風に楓なのであって、俺のような楠ではないのか」と
詰問したりはしない

「君の名前は?」
何故そんなことを知りたがるのだろう
僕の存在を
世界という大きな絵から切り取って
どこに貼り付けようというのだろう

自然は互いに名前を割り振ったりしない
自然は一体だ
僕たちはみんな名前を持ち
そしてばらばらだ
知りたがり屋だけが 目に映る全てに名前をつけて
世界を細かく ちぎり取っていく

赤ん坊に向かって
お前は何故生まれてきたのかと
訪ねるだろうか
人は何故生きていくことに
理由を欲しがるのだろう

何故自分を証しするために
名前を頼るのだろう
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