ひとつ 外側/木立 悟
 





小さな小さな
無数の鳥の声がする


右手 左手
別々に回る泡のなかに立ち
別々の夕陽を見つめている


どこにでもある川が
見えたり見えなくなったりしながら
壁を越え
中庭の空を巡る


窓の夜には窓の夜があり
ずっと震えを呑みつづけている
夜のひと筆
重ならぬつらなり
夜の濃淡


誰も伝えにこなかったのに
既に伝わっている色たちが
雨にしがみつき
海に運ばれる


渦よ
渦らしくない渦よ
小さな色の
無数の胞よ


追うものの記憶
記録なき花と花の群れ
すぎてゆくもの 添うものの影
かたちをかたちに連れもどす影


夜に埋もれる夜のいくつか
かがやく夜のいくつかが
頬を畏怖する指のように
ふいの涙にぬれてゆく































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