夜のはじまり/Yuuki
 
空気が粘土のように冷たくなり、
小鳥のように夜のはじまりを告げる。

葬式を祝福するように、夜の人々は
近い未来の道を歩きながら、
ここには戻らない決意を顔に見せ始める。

時計の針を逆回転させて覗いてみても、
世界は始まりの姿を見せてはくれない。

夜を運んでくる人に僕は
最大の愛情をもって花束を贈りたい。

死を意識し始める年になれば、
ここから抜け出していく道筋も見えるのだろうか。

遠い太陽を覗いて網膜を燃やしつくし、
聞こえた銃声を一生の思い出として脳内に焼きうつす。

水の埋まる感覚と吸い出されていく空気の感覚とを
体に感じながら、僕はこの夜の階段を登っていった。
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