頂きます/一 二
 
かう者もまた存在した

邪神といえど
神に刃を向けるなど不敬の最たるもの
その累を考えれば
神の名前すらも容易に口にすることは出来ない
だから神に抗う人々は
皆一様にこう言ったものだ
「ちょっと田んぼの様子見てくる」

残された家族は涙を隠し
「あんた気をつけてね」
と送るのが精一杯であった

我々は決して忘れてはならない
食卓に並ぶ一品一品が
彼らの決死の抵抗の賜物であることを

「頂きます」
は彼らの誇りと魂に敬意を表して
「ご馳走様」
は必死に戦った彼らの姿を
脳裏に浮かべるために

我々日本人の食卓はかくの如く始まり
そして終わるべきなのである
戻る   Point(4)