世界一質素な戴冠式/雪路
青空にも星が散りばめられていたら
昼と夜の空の違いなんて
青いか黒いかだけだよね
そう言ったら
君は
うふふと笑った
ハルジオンの花を結って
輪を作った
それを君の頭に載せて
世界一質素な戴冠式をした
君は
さっきよりも明るく笑った
眉間が、すこしこわばっていた
褪せた軍服の
汗臭いにおいを
君に思い切り嗅がそうと思い
君を強く
抱き寄せた
君は笑った
本当に一生懸命に
笑顔をつくろうとしていた
口角がひきつって
細めた目から涙が零れた
口から漏れ出る
低い嗚咽を殺すのに
可哀そうなくらい
必死になっていた
あいし、てる
君の頭に手をのせ
耳元で囁き
君を放して
汽車へと向かった
不潔な汽車のなかで
銃を
強く胸に抱えた
彼女より
ずっとずっと
強く抱えていなければならないと
自分に言い聞かせながら
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