浜辺にて/つむ
こどもたちの柔かい足のうら
パンのくず
魚、いるかな?
丸い5つの指を持つ足のうら
太古の感動を砂に記し
波の中の気泡に笑う
こどもたちの小さな足のうら
血管の美しくすきとおるその足跡
魚、いるかな?
いないね
魚
こどもたち
魚は 死んで
おとなたちは革靴のなかに
その屍骸を隠している
砂だらけの足のうらが帰ってくる
いくつも
魚 いなかった
いたよ
いなかったよ
魚 どこへ行ったの?
わたしは砂をつまみあげる
魚 魚は
今夜の夕食になっている
わたしたちは魚をくらって
歯を磨いて眠るんだよ
私は目を細める
かなたに鎔けている水平線
その向うにあるという島を
地図でしか見たことがない
多分 海底の近くに
ねむっているのだろうね
私のなかで こどもたちが黙りこむ。
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