友引のひと/恋月 ぴの
 
手持ち無沙汰に見上げれば夏のような雲の動きと

山すそは無残に切り開かれ
ひとの忌み嫌うものの一切合財を

そのはらわたに黙して受け入れているのか
それとも受け入れざるを得なかったのか

今日はそんな日であることは疑いようも無い事実だった




壁際の肌触りはキリコを意識しているようで
多面形で構成された正面玄関前に一台のクルマが滑り込む

霊柩車と呼ぶには粗末なワゴン
運転手は後部ドアから棺を引き出した

あれもストレッチャーなのだろうか
器用にひとりで棺を乗せると斎場のなかへと運んで行く

誰の棺なのだろう

タクシー待ちな私達の他に遺族らし
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