光の棺/草野春心
{引用= 夕暮れ近くになると
老いた女がアスファルトに
一つの箱を置きにくる
ただの箱だ
ダンボールでできた、薄暗いだけの
小さな箱
それを置くと女はきびすを返し、
どこかへ消えてしまう
箱だけが残される
夕暮れの時間は
ゆるやかに流れつづけ
誰一人として滞ることがない
箱だけが
そこに残されている……
電車がレールを滑走している。子ども
たちがサッカーボールを蹴り合ってい
る。新聞紙が投げ捨てられる。モニタ
ーのうえに句読点が出現する。銃の引
き金が、勿体をつけるように引かれる。
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