天秤座/つむ
 
夜の境界の細いガラス線
危うく立ち 薄目をひらき
沈黙の表面張力 声は貝にねむり
とつぜんの風が雲を掃う、
月の咆哮が闇をきりさく
天秤座の右肩からこぼれ落ちる。
ことなる時間のせりあがる隙間を
布を背に、風を腹に
ぬるい大気を切って冷たい月光につらぬかれて
おちるならばおちるだろう
体温のことなど忘れ去ったまま
接続と切断のことばかり
考えていた。

呼吸、一人称の外にある惰性
永絶のとなりでめかしこむ身体
青ネギと野良猫と女王とボウフラ
古代都市の燃え落ちた場所で
たのしく泳ぎまわる小魚たち
そっとつり合ってゆく天秤
再び重なって行こうとする身体と非身体
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