梅田周辺/メチターチェリ
 
部分の中にこそ紀子がいた。
 彼女が意図して見せてくれる、晴れの部分に触れるのは心地よかった。
 しかし、ぼくが抱いている親密さは、それだけで満たされることはないのである。

「知りもしないことに、どうして親密になれるの?」彼女は言うだろう。
 ブドウ、ナッツ、モンブラン、干渉。好きなものより嫌いなものが増えていく。
 
 帰りの地下鉄を待つあいだ、なにか言葉を探してみた。案の定なにも出て来なかった。ぼくは感傷的な気持ちになっていたので、なにかを言うと楽しかった今日を台無しにしてしまいそうな気がしたのである。
「おやすみ」彼女が言った。
「おやすみ。ちゃんと寝るんだよ」手を離し、電車に乗り込む。
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