夜明け前/千波 一也
 


思い返せば、
みじかい言葉でした

苛立ちも
かげぐちも
願いでさえも

今となっては
レンズのない顕微鏡のような

役立たない、とは
言わないけれど

言えないけれど

もう少しだけ
毛布にくるまれていたい、とだけ
本音をぽつり



慣れた手つきで
開きかけたカーテンを
放置してしまいましょう

やめたところで
だれも困らないなら
すてき過ぎて
泣けてきます

振り返ることは、もう
終わりにしましょう



だれかに
聞いてもらえるような
願いではありませんでした

聞いてもらいたかったのか、と
問われたら
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