中島みゆきが思い出せない/blue
ヨシダさんと歩きながら私は
柱の後ろに隠れ、それでも小さな声で
ありがとうございました と言った年老いた女と、
黙っておつりを差し出したフロントの皺だらけの手の
女のことを考えていた。
歩道橋の下で、OL風の若い女の子が
青白い顔で苦しそうに口元を押さえていた。
介抱する方もされる方もよく似た髪形で、
よく似た服装だった。
彼女たちの足元の週刊誌はパラパラと風にめくられ、
ようやく静かになったページには、
まだ幼さの残る水着姿の少女が長い脚を組む。
どれもこれも、みんな女だった。
女は強いのかもしれないと勘違いしそうだった。
ヨシダさんは改札の上
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