中島みゆきが思い出せない/blue
車のライトに浮かび上がったふたつの影は、やはりどこか
不釣合いだった。
男のジャンバーの下からはスウェットがのぞき、女は短い
スカートに、つんのめりそうなハイヒールを履いていた。
ヨシダさんが煙草を買う間に、その二人は3回抱き合って
2回キスをした。
白いベンツが二人の近くにすっと停まるのと、女が男から
体を離すのはほぼ同時だった。
女だけが車に乗り込み、残った男は何事もなかったように
暗闇へ消えていった。
― 商売女だな ―
と ヨシダさんが珍しく下品に言った。
― じゃあ 今のベンツは女衒? ―
と 聞くとヨシダさんは
― 難しい言葉を知っているん
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