ノート(48Y.9・17)/木立 悟
 




描かなくなった人の家
しあわせな闇
そこで良い人は
良くなってゆく


記憶に刺され
死にながら歩く
美しいとは
死んでも言わない


近づくと冬
離れると冬
ほんのわずかで
冬しかなくなる


雨に応えなさい
少しずつ動きながら
彼もまた
動いているから


黒はふたつ
他は無数に見える
川辺の合唱
聞こえずに 紅い


わからぬものが道に降り
道のかたちに積み重なる
潰しも壊しも否定もせず
ただそのままに震えている


鍵を持っていたが
返してしまった
帰れない家の前をすぎ
未だ明けない雨を歩む



























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