君の猫/草野春心
 


  猫よ
  おまえは邪魔だから
  どこまでも流れていってしまえ
  そう言うと僕は
  ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
  便器に放りこんで
  「大」のレバーを回したのだ
  ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅると
  猫は流れていった
  速やかに、けれども
  末代まで祟ってやると云わんばかりの
  威嚇の形相で顔をゆがませ



  それから僕は
  寝室に戻って君と
  朝の性交の続きをした
  そのあいだじゅう
  二人とも何も言わなかったし
  呻きひとつ洩らさなかった
  誰にきかれてもかまいやしないのに
  カーテンが微風になびき
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