逃げ道を照らせ/
千波 一也
境目のなす意味は、もう
ひとつも残らない
誰のためでもなく
なにかのためでもなく
ほんのわずかな自由さと
それを育てる不自由さとが
尊い巨塔をなして
ゆく
監視のための、
うつくしい
巨塔
夜よ、灯れ
絶えずに灯れ
小さきものの
迷いや憂いや誇りの頭上から
はるか、
逃げ道を
照らせ
最後の
最後の
すくいのように
ただまっすぐに
照らせ
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