逃げ道を照らせ/千波 一也
 

境目のなす意味は、もう
ひとつも残らない

誰のためでもなく
なにかのためでもなく
ほんのわずかな自由さと
それを育てる不自由さとが
尊い巨塔をなして
ゆく

監視のための、
うつくしい
巨塔



夜よ、灯れ
絶えずに灯れ

小さきものの
迷いや憂いや誇りの頭上から
はるか、
逃げ道を
照らせ

最後の
最後の
すくいのように
ただまっすぐに
照らせ






戻る   Point(9)