逃げ道を照らせ/千波 一也
 



工事ランプは今夜も寂しくて
車もまばらな夜の向こうには
灯るような、三日月

いまとなってはどんな言葉も
傷をかばうための
道具でしかないのなら
せめて
こまめに
踏むしかない
ブレーキを、
ブレーキという
狭さを


 おのれの強さを守る理由は
 総じて弱く
 おのれの弱さを守る理由は
 総じて
 強い


どんな明かりで照らしても
背中の荷物は影を落とさないから
すべての寂しさよ
細々と
灯れ


 赤く
 ブレーキランプの断続が
 ミラー越しに
 遠ざかる


この目に映る遠くまで
夜はまっすぐ伸びていて

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