ノウゼンカズラ/花キリン
まき水をしてみる
夕立を誘うように
蜃気楼の先から
風鈴電車が走り抜けてくる
虹の橋がゆっくりと空へと伸びていく
暑い日には
童話の中の物語が懐かしく思い出される
この塀を乗り越えると
戦時中の荒廃した時代に戻れるというのだが
蔦や花びらが巻きついた平和な時間から
遠ざかる覚悟が必要だ
生きることで精一杯だった青春時代
背伸びしても届かない先には命の迷いがあって
夢などみる時間はなかった
大胆に冒険してみようかと
いまの時代は平和だから
躊躇するものが希薄になっているのかも知れない
塀の中から押しとどめるようにして
無数の神の手が伸びてくる
蝉が鳴くこの平和だけは守らなければならない
ノウゼンカズラの枝先が天上へと伸びていく
真夏日に行水している子供たちは
まぎれもなく天使だ
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