◆雲のまにまに/千波 一也
 




わがままな迷子のためのひつじ雲
お日さま連れてあしたもおいで



迷いのない軌跡を示せ飛行機雲
だれのものでも、いつのものでも



先端の爪にひそかに願いごと
積乱雲の背中にかくれて



暗雲がたちこめました今朝もまた
空にはこころが筒抜けなのです



焼け落ちるダイアみたいにうろこ雲
水面づたいに夕焼けていく



絹雲の立ち振る舞いは圧巻です
あおぐ瞳はみなエキストラ



雨雲のふりした言葉を追いはらえ
まがいのしずくに欺かれるな



その海も厳しいですか鰯雲
いつかちぎれるつかの間の魚影



戻る   Point(5)