メロンアイランド/乾 加津也
 
武器の形をした島

地球上で最も凶暴な住民、ただしあくまで、潜在的に

ありふれてはいるが、空から見下ろせばその島は太平洋に浮かぶ拳銃にみえる、シリンダーのあたりから山となって人工の針葉樹林が長細く広がり、銃口は上空を向いている

旅行客の間で密かな話題が忘却ツアーである、この島で絶滅した爬虫類の骨を素手で拾ってむき合わせるだけで未知の「忘却」を体験できる、躰の芯(カーボン)が剥きだしになるほどの主雷撃の電荷の可視化、それはカモメの生息しないただ一つの波止場でおこる

メロンアイランドの約千人ほどの住民はだれひとり歴史を学ぼうとしない、島そのものが始まりの来ない歴史という認識、この
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